日本語教育:どんなことを教えるの?
「日本語を教えてみたいけれど、どこからどうやってはじめたらいいかわからないから教えてください」という質問をよく受けます。特に、「留学時代に友達に簡単なフレーズを教えたけれど、本格的に教えるにはどうしたらいいかわからない」という方が多いです。
そこで、ここでは大まかに外国人への日本語の授業の内容を、言語交換と国語との違いを私なりに比較したいと思います。
*******
1.言語交換との違い
外国人の友達や知り合いに日本語を教えてと言われた場合、たいていはフレーズで教えることが多いと思います。たとえば、もし外国人の友達に「just a second は日本語で何ですか?」と聞かれた時「まってください」と答えたとします。その外国人は、just は「待って」、secondは「ください」と思ってしまうかもしれません。
あるいは、少し日本語を知っている人が「のみてください」という間違いをしたとき、「のみてじゃなくてのんで」と訂正するだけだと、どうしてかと理由を尋ねられ「どうしってって・・自然だから」というだけにとどまり、相手をさらに悶々とさせることもあると思います。
こんな時に、日本語教師であれば「~てください」という文法の形式があること、さらに「て形」という動詞の活用を教えて応用ができるように教えることができます。
もうひとつ言語交換と違う点は、自分が相手の言語を習いたいという気持ちは捨てて教えることに徹さなければいけないと言う事です。日本語教師になりたいという方の中には、自分の語学力も伸ばしたいという目的の方もいると思います(私も当初はそうでした)が、プロとしてお金をもらって教える以上は自分は教える側で学ぶ側ではないという線引きをしっかりしないといけません。特に上級者になればなるほど日本語だけで会話したいという方が多いので、日本語をいかに分かりやすく日本語で説明するかが必要になってくると思います。
2.日本人が勉強する「国語」との違い
これは私が日本語教師になる前の失敗ですが、ブラジルから来た友達に日本語を教えてと頼まれた時、小学一年生の教科書を用いたところ、意外にも難しい表現が多く、ほとんど役に立ちませんでした。子供用ならば簡単という安直な考えでしたが、日本人の子供ならば小学校に入る頃には、すでに基本的な文法を意識せずとも知っているわけで、内容は子供向けであっても日本語としてはすでに中級レベルなのです。
国語の教科書から一例をあげると、「しまった、穴があいていた」というような一見簡単な表現も、日本語初級者にとっては見たことのない文法点がこの短い一文につまっていて「???」という感じになってしまいます。
初級者ですと、ていねいな「ます形」から勉強するので、このような子供向けの言い方はわかりません。また、「あいている」は二つの動詞がつながった複合動詞であること、「あく」は自動詞であること、「した」と「しまった」のニュアンスに違いがあることなど、この短い文だけで2,3時間の授業になってしまうくらいの文法点が盛り込まれています。
子供であれば深く考えずに大人のまねができますし、状況からすんなりと理解して覚えてしまうのですが、大人になるとなかなかそうはいかず、理屈が伴わないと覚えにくくなるので、このように一つ一つ文を解きほぐして説明していかなければなりません。
このような説明ができて、相手の外国人が「ああよくわかりました。」とすっきりした顔でお礼をしてくれた時、言語交換のパートナーではなくプロとして日本語を教えているんだと実感することができるのです。
*******
小川 清美
フリーランスの日本語講師。Cartus の講師として日本在住のボーイング社員や家族に日本語を指導。2012年CartusTop language teacher。そのほか、クラブイタリア名古屋、リンゲージ日本語学校などで契約講師として勤務、また移民、難民などにプライベートで日本語を指導。現在はオンラインレッスンが中心。
2019年4月より約2年間、MATCHA - JAPAN TRAVEL WEB MAGAZINEに四コママンガとともに日本語についての記事を連載
ストアカで「オンラインでの日本語の教え方」開催
著書 ※詳細はブログ『Fun! Japanese lessons』よりご覧いただけます
- Practical Japanese1,2,3 Easy and Fun ひらがな、カタカナ、漢字
![]() |
![]() |
![]() |
---|---|---|
![]() |
![]() |
![]() |
- やさ日まんがJAPANガイド