日本語を教えるのに英語は必要?
「日本語を外国人に教えている」と人に話すと「いいな~、英語ができるからね」とよく言われます。確かに、私のレッスンでは英語で説明することがありますが、全く英語を使わずに教えることも可能です。いわゆる直接法というものです。反対に、英語などの媒介語が必要な場合を間接法と言います。
日本国内にある日本語学校や日本語教室では、直接法方法が主流です。私が通った日本語教師養成講座では、直接法での教え方を学びました。ですから、結論から言うと、英語を話せなくても日本語は教えられるのです。
そうはいっても、私自身はやはり直接法で教えることに限界を感じましたし、また、学んだ英語を活かしたいと言う気持ちもあって、英語を使った間接法の教え方を通信教育で学び直しました。そうして、直接法と間接法を生徒によって使い分けています。
また、英語だけではなく、英語の苦手なアラブ系の女性に教えた際には、違いの伝えにくい動詞(ほしい、必要、したい)などはアラビア語で調べてから、レッスンにのぞみました。ほんの一言を教えるために絵カードやジェスチャーで時間をかけていたものが、ほんの数秒で理解できたので、やはり便利でした。
もちろん直接法にもよい点がありますし、間接法の欠点もあります。そこで、わたしなりに直接法と間接法の良い点、悪い点を比較してみました。
直接法 | 良い点 | 大人数、多国籍の授業で教えることができる。 文法が必要のない子供に教えるときに便利。 |
悪い点 | 時間と手間がかかる。誤解が生じやすい。 生徒が混乱してストレスを感じてしまったり 同じ国籍同士の生徒とのおしゃべりが増えてしまう。 |
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間接法 | 良い点 | 指示をするときに便利。 教えたい文法点と指示語との区別がつきやすい。 生徒の理解が速い。 |
悪い点 | 生徒が翻訳された意味でしかとらえられない。 先生が生徒の母国語または英語を知らないといけない。 |
このように、どちらもいい点と悪い点があります。さきほども書きましたが、生徒によって両方を組み合わせて教えるのが、私には合っていると思います。たとえば、初級者の場合、指示語と教えたい文法との区別をするために、指示語は英語を使います。英語圏ではない人でも、、最初のうちは指示語に簡単な英語、ok, next, repeatを使うといいと思います。
以前、ボランティアの方が日本語教室の初級クラスを教えているのを見学したことがあります。生徒はベトナム人、中国人、ブラジル人など国籍は様々でしたので、直接法での授業でした。「なんじですか」という簡単な文法とはいえ、初めての日本語に生徒たちはとまどっているようで、ネイティブ同士でひそひそと教えあっている様子がみられました。ボランティアの方は、授業の最後に生徒たちを慰めようと、「まぁ~難しいね、すこしずつ覚えていってくれればいいかな」と、早口の自然な日本語で言いましたが、生徒たちはその方の言うことが何一つわからず、教室には気まずい雰囲気が漂ってしまいました
相手を思いやる気持ちから自然にそのようなフレーズが口から出たのだと思いますし、相手が分かるような、やさしい日本語だけを使うというのはなかなか難しいものです。
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多国籍のクラスの場合はなかなか難しいことですが、日本語が初めてで、緊張している外国人に、その方の母国語ですこしでも話しかけてあげると、緊張がほぐれ、授業がスムーズにすすむこともあります。文法を理解させると言う目的だけでなく、相手の文化に興味を持っていると言う事を示すことにもなりますし、教えてもらう立場の生徒が、教師の下手な外国語を聞いて、共感をもつこともあります。
色々な言語に翻訳されている教科書もありますので、授業が直接法でも、そのような教科書やそのコピーを授業前に配布してあげると、生徒たちも授業で戸惑うことが少ないと思います。
生徒のためを考えて臨機応変に対応するのがよいのではないでしょうか。
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小川 清美
フリーランスの日本語講師。Cartus の講師として日本在住のボーイング社員や家族に日本語を指導。2012年CartusTop language teacher。そのほか、クラブイタリア名古屋、リンゲージ日本語学校などで契約講師として勤務、また移民、難民などにプライベートで日本語を指導。現在はオンラインレッスンが中心。
2019年4月より約2年間、MATCHA - JAPAN TRAVEL WEB MAGAZINEに四コママンガとともに日本語についての記事を連載
ストアカで「オンラインでの日本語の教え方」開催
著書 ※詳細はブログ『Fun! Japanese lessons』よりご覧いただけます
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