言語を学ぶこと、そして教えること

私の生徒さんは様々な理由で日本語を学んでいます。一番多いのは、当たり前と言えば当たり前ですが、日本が好きだからという理由です。アニメやゲームなどのポップカルチャーが好きという生徒が大半をしめていますが、伝統的な文化や自然、食べ物に惹かれて日本を旅行するために日本語を勉強する方も多いです。
次に多いのは、仕事のために日本語を学ぶ方々です。車をはじめ、電化製品、ゲームと様々な国際的企業で働く人、または働きたい人のためのクラスを受け持つこともあります。インタビューや職場での会話で使う、いわゆるビジネス日本語が中心ですが、なかには、仕事では英語しか使わないけれども同僚とのコミュニケーション(飲みにケーションも)で少しでも日本語が使えるとぐっと距離がちかくなるので、という方も少なくありません。
一方、日本に興味があるわけでも、仕事に必要なわけでもなく、単に語学が好きだからという方々もいます。私もその一人で、子供の頃から外国語を聞いたり見たりするとその国の空気を感じワクワクしたものでした。言語を勉強することで、その国民性や文化、歴史など、未知の世界を知ることができるのも魅力だと思います。
以前、中国の生徒さんに教えたときのことです。上級の方でしたので、レッスンでは、よくニュースの記事を教材にしていたのですが、中国では得られない記事があったようで、しばしば目を丸くしたり、複雑そうな表情をみせていました。見せるべきではなかったかなと、後悔したのですが、ある日、レッスンの後に残された感想に「先生のおかげで新しい窓が開けたような気がします」とあって、ホッとした以上に、自分の仕事に充実感を感じることができました。

また、外国語を話すことで自分自身を変えることができたという人もいます。数年前に教えたある生徒さんは、子供の時にいじめられたことで自信をなくしてしまい、何事にも消極的だったのですが、日本語を話すことでそれを克服できたそうです。
その彼の最初のきっかけはおばあちゃんにもらった日本語を話すおもちゃでした。そのおもちゃが発する言葉がおもしろくて、彼がまねをするとみんなが喜ぶので、まるで自分がいつもの自分ではなく明るい人気者になったような気がしたそうです。そうして日本語を勉強し始めたそうですが、レッスンの間もまるでバラエティーショーの司会者のような話芸で、普段は無口で日陰の存在なんだというのが信じられないくらいでした。その自信がきっかけとなり、彼は日本語にとどまらず、体を鍛えたり、楽器を習い始めたりと次々と新しいことにチャレンジするようになり、人気者になったようではなく、彼自身が本当に人気者になっていったのです。

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語学を学ぶことは知らない世界への扉であり、また、自分の可能性をまた一つ広げることにもなるのです。
日本語を教えることはその可能性をお手伝いすることだと思います。
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小川 清美
フリーランスの日本語講師。Cartus の講師として日本在住のボーイング社員や家族に日本語を指導。2012年CartusTop language teacher。そのほか、クラブイタリア名古屋、リンゲージ日本語学校などで契約講師として勤務、また移民、難民などにプライベートで日本語を指導。現在はオンラインレッスンが中心。
2019年4月より約2年間、MATCHA - JAPAN TRAVEL WEB MAGAZINEに四コママンガとともに日本語についての記事を連載
ストアカで「オンラインでの日本語の教え方」開催
著書 ※詳細はブログ『Fun! Japanese lessons』よりご覧いただけます
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