「上と下」

前回、日本の「内と外」について書きましたが、「上と下」の関係も日本社会をよく表していると思います。敬語を欧米の方たちに教えるときは、決まって「この関係がないからわかりにくい」と言われます。敬語を教えるには、まずこの関係をきちんと理解しないと、どのような場合に誰に対して敬語を使うのかがわかりません。
尊敬語と謙譲語の使い分けについて調べると、日本人のビジネス向けのサイトが多く出てきます。日本人でさえも、社会人になってからあらためて敬語を習うくらいですから、この上と下の概念があまりない国のかたにとってはさらに難しいはずです。
そうはいっても上から下ですから「上司と部下」「先輩と後輩」「年上から年下」「客と店員」と説明すると、なるほどと、すんなり理解するようです。

practical Japanese 3 より
しかし以前生徒から、こんな質問をされ考えてしまったことがありました。
「敬語はビジネスやサービスだけで使いますか?近所の人やはじめてあった人で同い年の人の場合は敬語を使いませんよね?」
「そうですね。ます形でだいじょうぶですよ」と答えたものの、考えてみればそのような場合敬語を全然使わないとは言い切れないことに気づきました。
特に「上と下」という関係ではなくても、お隣さんにお菓子を持っていった場合「食べてください」ではなんだか失礼な感じがするので「召し上がってください」と敬語を使っています。
さらによく考えてみれば、私が週1回通っていた生け花の先生は、生徒である私に対して敬語を使っています。年も私のほうがずっと下なのに。尊敬語をややくずして、「いらっしゃるの?」「召し上がる?」と語尾はくだけた話し方です。
これは「上下」の関係ではなく自分を上品に見せる「美化語」です。

やさ日まんがJapanガイドより
このような文化のない国の方に伝えるには、漫画や写真を見せると、おすすめです。
敬語を教える際は、「上と下」の関係だけでなく、人それぞれに合った話し方があることも説明できるといいですね。
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小川 清美
フリーランスの日本語講師。Cartus の講師として日本在住のボーイング社員や家族に日本語を指導。2012年CartusTop language teacher。そのほか、クラブイタリア名古屋、リンゲージ日本語学校などで契約講師として勤務、また移民、難民などにプライベートで日本語を指導。現在はオンラインレッスンが中心。
2019年4月より約2年間、MATCHA - JAPAN TRAVEL WEB MAGAZINEに四コママンガとともに日本語についての記事を連載
ストアカで「オンラインでの日本語の教え方」開催
著書 ※詳細はブログ『Fun! Japanese lessons』よりご覧いただけます
- Practical Japanese1,2,3 Easy and Fun ひらがな、カタカナ、漢字
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